最高裁判所第三小法廷 昭和41年(オ)1015号 判決 1967年3月07日
上告人
鈴木忠次郎
(ほか四名)
右上告人ら訴訟代理人
五十嵐与吉
被上告人
阪本範幸
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人五十嵐与吉の上告理由について。
農地法六一条所定の土地等の処分の制限に関する同法七三条の規定は、右の土地等の所有者が私法上の契約により任意にその所有権を移転する場合にとどまらず、強制競売、任意競売および国税徴収法による滞納処分(その他の法令により同法の滞納処分の例による場合を含む。)による公売により前記土地等の所有権が移転する場合にも適用されると解するのが相当である。けだし、前記七三条が前記の制限を定めたゆえんは、自作農を創設し又は自作農の経営を安定させるため必要があると認められて買収された前記の土地等について前記七三条所定の権利を設定し又は移転するには、右の買収目的に鑑み、農林大臣の許可をその効力発生の要件とするのが相当であるという法意に基づくものと解すべきところ、右権利の設定又は移転が任意処分による場合と強制競売等による場合とでその取扱を異にすべき理由がないからである。所論は、右と異なる見解に立脚して原判決を非難するものであつて、原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 柏原語六 田中二郎 下村三郎 松本正雄)